世界各国のヘンプ栽培事情と使用目的について

今、熱い議論を巻き起こしている大麻。大麻はマリファナと産業用ヘンプがありますが、日本では大麻取締法という法律があり、どちらも扱いが禁止されていますが、幻覚作用をもたらすTHCという成分を多く含むマリファナに比べ、産業用ヘンプはTHCをほとんど含まず、むしろ、心身のリラックス、バランスの良い高タンパクを含む食品として、大きな健康効果のあるもの。

日本ではヘンプ=「麻薬」という悪いイメージが先行していますが、これは間違ったイメージであり、正しくヘンプの使い道を妨げる非常にもったいない認識です。世界各国ではヘンプ大麻は、非常に多くの用途で日常に使われています。そこで、世界の国々のヘンプ栽培に関する法規制や、利用方法などを調べてみました。

北米

カナダ

カナダは、1990年代に新ビジネスとしての関心が高まり、1994年から4年間かけて、ヘンプ栽培の研究調査が行われた。1995には、一定制約のもと、繊維を取るための栽培をするようになり、1995年には、種を取るためのライセンスも取得。1998年に産業用大麻規則(Industrial Hemp Regulations)を設けて栽培を解禁した。商業目的の農業としてのライセンスを取得したことにより、ヘンプの栽培は急速に拡大した。現在は、多くのカナダのヘンプ農家は、オーガニック認証のヘンプを栽培している。EUと異なりほとんどが麻の実を食用に利用。

アメリカ合衆国

アメリカは、1999年に、ハワイで最初のヘンプの合法化が決まり、ヘンプ栽培が始まったが、投資金の問題が起こり、栽培自体は中断されていた。しかしインポーターや、製造業者は、輸入された原料を使い、市場を活性化させようとしており、この動きは、22の州でサポートされてきた。

そしてついに、2018年12月20日、トランプ大統領は、ヘンプ(産業用大麻)を麻薬指定から除外し、監督官庁を麻薬取締局から農務省へ移し、他の農作物と同じ扱いとする「2018年農業法案」にサインした。今後、これを受けてアメリカ全土でヘンプの栽培や加工、そして派生製品の開発や販売が活発化するとみられている。世界に大麻禁止政策を普及させた国は、解禁の方向に舵を切ったことになる。

ヨーロッパ

フランス

フランスは、昔から紙パルプ用に麻が栽培していたために一度もヘンプの規制をしていない国。EUは世界のヘンプの4分の1を栽培しているが、その半分近くはフランスが占めている。1994年には、10000トンの繊維を収穫。フランスは、THC度の低いヘンプの種を、他の国に提供しており、また、高品質のヘンプオイルをアメリカなどに輸出している。

ドイツ

ドイツは、1982年に、ヘンプ栽培が禁止されたが、その10年後の1992年に、リサーチが開始され、その後、多くの技術開発、商品開発が進んだため、1995年11月より、薬理成分THCが0.3%未満の産業用の麻の品種に限定して栽培解禁となった。食品、衣料、製紙の目的で、ヘンプの原材料が多く輸入されている。メルセデス・ベンツやBMWのドアのパネル、ダッシュボードなどにも、ヘンプの繊維が使われている。

イギリス

イギリスは、1993年に、薬理成分THCが0.3%未満の産業用の麻の品種に限定して栽培解禁。動物飼育用のベッド、製紙、衣料生地のマーケットが発展した。1994年には、4000エーカーもの土地で栽培が始まり、政府は、1エーカーに付き、230ポンドの補助金を生産農家に与え、栽培を促進している。

ハンガリー

ハンガリーは一旦途絶えた、ヘンプ市場を再度、構築しており、現在では、ヘンプの縄、敷物、生地などにおいて、USへの最大の輸出国となっている。また、ヘンプシード、建築資材なども海外に輸出。

フィンランド

フィンランドは、過去に一度も、ヘンプ栽培を禁止されたことはない。フィンランド語で、ヘンプは、“Hamppu”と呼ばれ、親しまれているが、気候的に栽培に適した品種がなく、栽培は一時中断。しかし1995年に、北部の気候に適したFinolaと呼ばれる新しい品種が開発され、実験的に栽培が開始。

オーストリア

オーストリアは、1996年に、薬理成分THCが0.3%未満の産業用の麻の品種に限定して栽培解禁となった。ヘンプ産業として、ヘンプシードオイル、医療用ヘンプの栽培をしている。

イタリア

イタリアは、ヘンプ産業への再投資を行い、主に、テキスタイルの生産で、産業を復活させようとしている。2002年には、1000エーカーもの農地が、繊維を取るためのヘンプ栽培に転換された。高級ブランドジョージアルマーニも、独自でヘンプを栽培し、特別なテキスタイルを開発している。

オランダ

オランダは、1994年に、薬理成分THCが0.3%未満の産業用の麻の品種に限定して栽培解禁となった。製紙におけるヘンプをテストし、評価するため4年間に及ぶリサーチを行い、そして、特別な機械を開発。また、シードブリーダーは、THC度の低い種子の開発に成功。

ポーランド

ポーランドは、現在、生地、ヘンプ縄、製造業用のヘンプ板を生産するために、ヘンプの栽培を行っている。また、鉄鋼業で汚染された土地を洗浄するために、工場の跡地にヘンプを栽培している。

ルーマニア

ルーマニアは実は、ヨーロッパでは最大の商業用ヘンプの生産国。1993年には、ヘンプ農地は、40000エーカーにも及んだ。生産された原料は、ハンガリーに送られ、そこで、様々な商品が製造されている。また、EU諸国、アメリカにも、輸出されています。

ロシア

ロシアは、植物産業のN.I科学研究所において、ヘンプの遺伝子の研究を行っており、その規模は世界最大。研究には、多くの金額が投資されている。

スロベニア

スロベニアは、お札の紙として、ヘンプを栽培している。

スペイン

スペインは、過去に一度もヘンプを禁止したことのない国の1つ。ロープ、テキスタイル、紙の原料のパルプを生産している。

スイス

スイスでもヘンプを生産している。また世界最大の、Cannatradeというヘンプ展示会の開催国でもある。

アジア

中国

中国ではヘンプは、伝統的な作物であり、1950年代に多くの麻の育種栽培の研究をしていた。しかし、全世界的に大麻栽培の禁止政策が実施され、50年代から生産量は90%以上減少した。しかし、2007年から中国の軍の漢麻資材研究センターとアパレル業界のNo1であるヤンガー・グループが巨額の出資し、2009年に雲南省に最新鋭の紡績工場を新設し、2011年から年5000トンのヘンプ繊維を生産している。現在では、世界最大の品質の良い麻生地の輸出国であり、また近年は、ヘンプの建築資材も生産。中国政府は、ヘンプ栽培は、オーガニックメソッドを採用していることを公約している。

日本

日本は、ヘンプは奥深い宗教的伝統に関連しており、天皇と神道の神主は、儀式の際には、ヘンプをまとうことが定められているため、ヘンプの栽培は、弓の糸、宗教儀式などごくわずかな目的に限り、極小さな農地で行われているのみ。しかし、ヘンプと非常に繋がりの深いこの国は、小売市場において、ヘンプ商品に興味をもつ人が増えてきている。

インド

インドは、カナビスオイルが有名で、また、ヘンプ縄、生地、種子などが取引されている。

その他の地域

トルコ

トルコは、2800年もの、ヘンプ栽培の歴史があり、主に、ロープ、コルク、鳥の餌、紙、燃料として栽培をしてきた。

チリ

チリは近年、ヘンプシードオイルの生産のための、ヘンプ栽培を行っている。

オーストラリア

オーストラリアは州ごとの法律が適用されている。一番早いのは、1995年のタスマニアでの試験的導入。1998年には、ビクトリア州、2002年にニューサウスウェールズ、クィーンズランドがヘンプ栽培を開始。2004年には、ウェスタンオーストラリアでも、ヘンプ栽培が合法化された。

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